この記事では、秩父札所33番・菊水寺(きくすいじ)について、その歴史・見どころ・御朱印・地図・近隣の観光・宿泊施設について紹介しています。
菊水寺は、赤平川の近く、田んぼが広がるのどかな場所にあります。
秩父札所巡りもいよいよクライマックス…この菊水寺と三十四番・水潜寺を残すのみ。33番から34番までは、1時間30分をかけて峠を越えるため、この菊水寺ではゆったりと心を落ち着かせたいですね。
目次
秩父札所33番・菊水寺の歴史・由来
現在の菊水寺は、かつて「大桜山 長福寺」という名前のお寺でした。
もともと札所33番・菊水寺は、現在の場所から600mほど離れた場所にあり、その管理を行っていたのが長福寺でした。
しかし、戦国時代の永禄12年(1569年)、武田信玄の軍勢が秩父に侵攻した際、菊水寺は消失してしまいました。
その後、菊水寺は再建されず、巡礼者たちはいつしか長福寺を菊水寺と混同するようになり、長福寺も、菊水寺の火災から逃れた本尊を長福寺の本尊としてまつるようになったといいます。
参道の入口には現在も「大桜山 長福寺」という標された石柱が建っています。
秩父札所33番・菊水寺の御本尊
火災によって焼失する菊水寺から運び出されたと伝えられる本尊は聖観音です。
一木造りで県指定文化財となっている聖観音像は、平安時代末期・藤原時代の作とされています。※画像は、御前立。
ちなみに、かつて菊水寺の境内があった菊水寺跡には、菊水の井戸跡や石仏などがあったとされていますが、現在はその痕跡がわからない状態となっています。
菊水寺跡は、菊水寺から南東おおよそ600mほどの距離にありましたが、現在ではそれを示すものは確認できなくなっています。
秩父札所33番・菊水寺の見どころ
本堂(観音堂)
入母屋造りの本堂/観音堂は、江戸時代の文政3年(1820年)に建築されたもの。
正面には「正大悲閣」の額が掲げられ、これは本尊の聖観音がいる場所を表しています。
左右の菱格子のある花頭窓も印象的です。
子がえしの絵図
土間には、『子がえしの絵図』が掲げられています。
これは、江戸時代に盛んに行われていた“間引き”を批判したもので、自分の子供を圧殺する女性が描かれています。
芭蕉句碑
江戸時代の寛保3年(1743年)に、松尾芭蕉の50回忌に建てられた芭蕉句碑。
“寒菊や 粉糠のかかる 臼の端”と書かれた字は、江戸時代に秩父札所の案内書「円通伝」を出版した円宗の筆によるもの。
句は、松尾芭蕉の晩年の傑作の一つとされ、臼と杵で米をつき終えて、寒菊にもうっすらと粉糠がついている様子をうたったもので、芭蕉案の冬の静かな一日が伝わってきます。
ちなみに、埼玉県内にある芭蕉句碑の中では最古のものとされています。
楠木正成と菊水
本堂の左側に掲げられている観音霊験記の絵図には、菊水寺で武運を祈る楠木正成が描かれています。
鎌倉時代の武将・楠木正成は、家紋が菊水(菊と波の模様)であることを縁に、この菊水寺で武運を祈ったと伝えられています。
そして、戦の折、敵軍の矢が正成に命中しましたが、正成は倒れることなく難を逃れたといいます。
不思議に思った正成でしたが、見ると肌身離さず持っていた観音経に矢の根が刺さっていたそうです。
菊水寺の名前の由来
菊水寺は、僧侶の導きによって改心した盗賊たちが出家をする際、菊水と呼ばれる霊泉で身を清めたとされたことから、「菊水寺」と呼ばれるようになりました。
尚、この盗賊たちが住処にしていたとされているのが八人峠です。八人峠は、菊水寺付近にある皆野町~小鹿野をつなぐ峠で、8人の盗賊たちが住処にしていたことから、この名前がつきました。
伝説によると、盗賊たちが僧侶を襲おうとするも、その僧侶の法力によって盗賊たちは身動きができず、その僧侶によって改心し、盗賊たちが仏堂に精進したとされています。
菊水寺跡の周辺には、八人峠を示す小さな石碑があります。
六地蔵尊
六地蔵尊は、地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天…の“六道“を行脚される地蔵菩薩です。
六道の世界を輪廻転生しながらさまよい続ける人々を救済し、極楽浄土へ導いてくださる菩薩様とされています。
秩父札所33番・菊水寺の御朱印
中央は、「正観世音」の文字。
ご本尊の聖観世音のことです。
秩父札所33番・菊水寺の御詠歌
春や夏 冬もさかりの 菊水寺 秋のながめに おくる歳月
秩父札所33番・菊水寺の基本情報
宗派 | 曹洞宗 |
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本尊 | 聖観世音菩薩 |
住所 | 埼玉県秩父市下吉田1104 |
納経時間 | AM8時~PM5時(11月~2月はPM4時まで)※12時~12時30分はお昼休憩。 |
無料駐車場 | あり |
アクセス | (1)秩父札所32番・法性寺から徒歩で約100分。 (2)西武秩父駅から西武観光バス/小鹿野車庫・栗尾ゆき「泉田」で下車。徒歩35分。 |
秩父札所33番・菊水寺の周辺スポット
菊水寺近くのおすすめ観光スポットを紹介します。
ようばけ
札所32番・法性寺から33番・菊水寺に向かう道中、「ようばけ」と呼ばれる大きく露出した地層を見ることができます。
「ようばけ」とは、“太陽のあたる崖(≒がけ、ばけ)”という意味で、地質学的にも有名なスポットです。
この地層は、約1,500万年前の新生代第三期に、浅い海の中、主に泥が堆積して形成された場所とされています。つまり、古代、秩父地域は、海の底だったのです。
秩父札所33番・菊水寺の地図
秩父札所33番・菊水寺近くのホテル・旅館
菊水寺を参拝する際に、おすすめの宿を紹介します。「星音の宿ばいえる」は菊水寺の近くにありますが、それ以外の宿は、徒歩の場合、かなりの距離があります。例えば、須崎旅館に1泊し、早朝から札所32番・法性寺を目指し、その後、33番・34番にアタックしていくなど、特に徒歩巡礼の場合は計画的に宿を決めましょう。
星音の宿 ばいえる
●画像:じゃらんnet
「星音の宿 ばいえる」は、菊水寺から徒歩で約10分の距離にあります。秩父吉田温泉「星音の湯」も併設されいますので、札所巡りのゴールである34番を目指す前夜に宿泊し、温泉宿を堪能し英気を養うのも良いでしょう。
宮本家
●画像:じゃらんnet
大相撲の元幕内・剣武が当主を務める宮本家は、「プロが選ぶ日本のホテル旅館100選」にも4年連続入選した秩父の高級宿です。200年もの伝統ある農家屋敷を改築した古民家風の宿の敷地内では、4ヵ所の貸切風呂・幕末の風景や日本庭園・農園を散策することができます。さらに、蔵barにて食前酒の利き酒や展示室にて秩父の歴史を堪能することもできます。
須崎旅館
美人女将が切り盛りをしていることでも知られる地元の有名宿です。貸切露天風呂「柿の湯」や、地元のお肉や旬の野菜などを味わえる郷土料理・地酒の飲み比べができる夕食も楽しみです。比較的リーズナブルな値段も魅力の1つです。