●秩父札所の「午歳総開帳(うまどしそうかいちょう)」って何?
●午歳総開帳の年は、どのような行事が行われるの?
●次回2026年の午歳総開帳の開催期間はいつ?
この記事はそんな方へ向けて書いています。
秩父地域にある全34ヶ所の観音霊場をめぐる秩父札所では、12年に1度、「午歳総開帳(うまどしそうかいちょう)」と呼ばれる特別な催しが伝統的に行われています。次回の午歳総開帳は2026年。この午歳総開帳の年は、秩父札所を目指して秩父地域を訪れる観光客も増えるため、現在、秩父札所や秩父地域ではその準備に向けた動きも少しずつ始まっています。
では、この「午歳総開帳」とは、一体どのような歴史や由緒を持つ催しなのでしょうか?
この記事では、「午歳総開帳」の基礎知識やその歴史について詳しく解説しています。まだ午歳総開帳の年に秩父札所に訪れたことが無い方に向け、過去に行われたイベント企画についても紹介します。この記事を読むことで、午歳総開帳の見どころをどのサイトよりも詳しくチェックすることができますよ♪
目次
午歳総開帳とは?
まずは午歳総開帳についての基礎知識を紹介していきます。
午歳総開帳とは?
(画像:札所13番 慈眼寺の御本尊・聖観音像の御前立)
秩父札所における「午歳総開帳」とは、12年に1度、午歳(うまどし)の期間に行われる伝統行事です。午歳総開帳の期間は、通常は厨子の扉が閉ざされて秘仏となっている御本尊を直接拝むことができます。
この午歳総開帳は、秩父34カ所すべての御本尊が一斉公開される唯一の機会であることから、普段よりも多くの巡礼者や観光客など秩父を訪れる方が増加します。
また、各札所では特別な御朱印を提供したり、秩父市内や鉄道会社などもこの期間に合わせた特別なイベント・キャンペーンを開催するなどして午歳総開帳をさらに盛り上げます。
なぜ午歳(うまどし)に開催されるの?
(画像:札所28番 橋立堂の馬像)
そもそも“(御)開帳”とは、普段は閉ざされている厨子の扉を開いて、御本尊を直接拝むことができるようにすることです。秩父札所の各寺院においても、御本尊が納められた厨子の扉はいつも閉ざされており、基本的にはこの午歳総開帳のときにのみ御開帳が行われます。
秩父札所で御開帳を午歳の年に行うのは、秩父札所の起源が甲午(きのえうま)の1234(文暦元)年であるとする説や、午=馬が観音様の眷属(けんぞく)=観音様の従者として信者に利益をもたらす存在であるという説があります。
午歳総開帳の歴史
(画像:観音霊験記 百番目録)
午歳総開帳の詳しい起源は分かっていませんが、その史実は古くより残されています。例えば、秩父巡礼が庶民の間で流行した江戸時代、1750年の午年総開帳における秩父札所の巡礼者は約7万人余りであったと記録されています。これは当時の四国遍路の年間5万人を大きく上回る賑わいでした。
また、江戸時代後期には西国・坂東・秩父の百観音霊場(日本百観音)を題材にした錦絵『観音霊験記』が誕生しましたが、これは午歳総開帳の期間に参拝客が増えることに合わせて作られたものとされています。この観音霊験記には各札所の観音様が起こした奇跡的なエピソードと名所旧跡の景観が描かれていますが、江戸の一般庶民はこの観音霊験記をガイドブックとして秩父巡礼を旅行気分で楽しんだとされています。
さらに、明治時代の「神仏分離令」以前は、秩父を代表するパワースポット・三峰神社においても、御祭神である伊弉諾尊・伊弉册尊の本地仏である十一面観音の御開帳を行ったという記録も残っているようです。
次の午歳総開帳は2026年(令和8年)
次回の午歳総開帳まであとわずか!開催期間などをおさらいしておきましょう。
開催期間
次の午歳総開帳は、2026年(令和8年)3月18日(水)~11月30日(月)です。
秩父札所巡りは、徒歩巡礼でも5~6日間で34カ所すべての札所を巡ることができます。午歳総開帳は約8カ月の期間がありますので、週末だけ秩父を訪れて巡礼を行う方法でも余裕を持って結願(すべての巡礼を終えること)を迎えることができるでしょう。特に春や秋などの行楽シーズンは、新緑や紅葉など自然溢れる秩父路をハイキング感覚で楽しむこともできます。
次回の午歳総開帳に向けた動きもスタート
秩父34カ所を束ねる秩父札所連合会は、すでに2026年の午歳総開帳に向け準備を始めています。2022年には、「新たな組織を立ち上げ秩父地域を盛り上げよう!」と秩父市役所で会合が行われ、専用の特設ページ(https://chichibufudasho.com/2026soukaichou)も立ち上がっています。
また、各札所では特別な御朱印の準備や、境内施設の整備などを進めているようです。午歳総開帳の開催に伴う盛り上げイベント・キャンペーンなど、今後、新たな情報が発表された場合は当サイトでもお知らせいたします。
午歳総開帳の年は何がある?過去のイベント企画まとめ
過去の午歳総開帳はどのような賑わいがあったのか?前回2014年(平成26年3月1日~11月18日)の開催に伴って行われた活動・キャンペーンイベントなどを紹介します。尚、2014年の午歳総開帳は、秩父札所の起源である1234年と同じ甲午(きのえうま)の年と重なったことも影響してか、数多くの催しが開催されました。
秩父札所
午歳総開帳の期間中、各札所では御本尊が納められた厨子の扉が開かれ、御本尊を直接拝むごとができるようになっています。
また、各札所の境内では、ご本尊と繋がっているお手綱(たずな)が回向柱に結び付けられ、お手綱(たずな)を参拝者が手に取ることで御本尊と一体となってご縁を結ぶ参拝方法が可能なところもありました。
さらに、巡礼者には特別な御朱印の提供をいただくことができたり、散華シールの無料配布も行われました。
鉄道会社
秩父鉄道や西武鉄道では、秩父札所のイメージイラストが施されたラッピング電車を運行させるなどして、秩父巡礼や秩父観光を推進しました。
また、記念乗車券の販売なども行い、午歳総開帳を盛り立てる取り組みが行われました。
ツアー会社
各ツアー会社では、午歳総開帳を記念したハイキングツアーやバスツアーを開催しました。秩父札所のバスツアーは、いくつかの札所を1日で巡るツアーもあれば、数日間に分けて34カ所全ての札所を巡るツアーなども開催されました。
秩父市
秩父市は前年2013年、午歳総開帳を記念するイベントとして「秩父札所巡りウルトラマラソン」を開催しました。秩父札所の近くの巡礼道を辿る全長84kmのコースで、標高差は418m。秩父路の美しい自然を感じながらも、12時間以内にゴールしなければいけない本格的なトレイルランイベントでした。
まとめ
秩父札所の午歳総開帳は、普段は厨子に納められて観ることができない御本尊を、直接拝むことができる特別な伝統行事です。秩父札所だけでなく地域が一体となって盛り上げる12年に1度の貴重なイベントとなるため、今から2026年の開催が待ち遠しいですね♪
ちなみに、普段は拝むことができない御本尊ですが、その代わりに御本尊の厨子の前に「御前立」(おまえだち)と呼ばれる仏像が安置されています。当サイトでは、各札所の紹介ページで御前立の御本尊を紹介しています。また、当サイトでは、秩父札所の仏像に関する情報も掲載していますので、事前の予習にお役立ていただけますよ♪(☞リンク:「秩父で仏像を学ぶ!~秩父札所巡りで出会う仏像たち~」)
今後も午歳総開帳に関する情報を発信していきますので、当サイトをブックマークしていただけますと幸いです。